埼玉司法書士会

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■テレワークでも残業代でるの?

 私はテレワークで仕事をしています。テレワークで通勤時間が減ったにもかかわらず、勤務時間が増えている感じがします。残業代を請求できますか。

 テレワークで働く労働者も、残業代請求はできますし、それが法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超過していれば、割増率25%以上の賃金を請求できます。ただ、テレワークの場合、使用者による労働者の労働時間の把握が、事業場の労働者と比べて困難な場合もあり、労働時間の算定方法が問題になります。

 そもそも、労働者の労働時間の算定は、原則的に実労働時間により行い、労働時間を客観的に把握する観点から、タイムカードの利用や使用者による現認などによるのが原則ですが、労働者の自己申告も可能です。

 テレワークの場合も、使用者が、インターネットの活用により労働者の勤怠管理や仕事の進捗(しんちょく)を把握できる場合には、実労働時間により労働時間が算定されます。

 しかし、インターネット環境の整備が十分でない事業所では、労働者の実労働時間を客観的に把握するのは難しいので、労働者による自己申告による場合もあると思われます。この場合、使用者が労働者による労働時間の自己申告を不当に制限しないように、厚生労働省よりガイドラインが出ていますので、使用者がそれに沿っているか確認してください。

 加えて、このような事業所では、勤務時間中に情報通信機器に常時接続可能な状態にする必要がなく、かつ会社の具体的指示に基づいて業務を行う必要がない場合には、事業場外のみなし労働時間制を採用することも認められています。この制度は、労働者の労働時間を実労働時間ではなく、労使で決めたみなし労働時間を労働者の労働時間とする制度です。例えば、労使で労働時間を1日8時間とすると、実際の1日の労働時間が10時間でも8時間労働とみなされ、2時間分の残業代は請求できません。この制度は、みなし労働時間に対して、過大な業務量を負担させることにより、会社の残業代逃れに利用される恐れもあり、注意が必要です。そのため、厚生労働省のガイドラインでは、使用者に対し、必要に応じて実態に合ったみなし労働時間になっているか労使で確認し、使用者はその結果に応じて業務量を見直す必要があるなどと指摘しています。

 ですので、みなし労働時間制が適用されているのであれば、そもそも適用要件を満たすのか、満たすとして、課された業務量がみなし労働時間に比べ過大でないかなどを確認してみてください。

 詳しくは、お近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 南谷 誠)

埼玉新聞 令和5年12月7日から転載

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