■敷金返還トラブルに要注意!
2年間借りていたアパートから退去することになりましたが、解約にあたり、大家さんから「ハウスクリーニング代として敷金全額が必要」と言われました。私としては、部屋を汚していないのに敷金を返してもらえないのは納得できません。そこで、大家さんに掛け合ってみましたが、大家さんは「原状回復費用だから」の一点張りで話し合いに応じてくれません。確かに契約書には「賃借人は原状に回復して返還しなければならない」と記載してありますが、ハウスクリーニング代は私が負担しなければならないのでしょうか。
アパートやマンションを借りる際、賃借人は、賃貸人に対して敷金を支払うのが一般的です。敷金とは、家賃を滞納した場合や、部屋に汚れや傷をつけて修繕費用が発生した場合などに備えて、あらかじめ賃貸人が賃借人から担保として預かるお金です。もっとも、敷金はあくまでも担保にすぎないので、延滞賃料や修繕費用などを控除した後、残額があれば、賃借人に返還されます。
ところが、この敷金の返還に関して、賃貸人と賃借人との間で「原状回復」の認識が異なることが原因で、多くのトラブルが発生しています。この点、国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、「原状回復」とは、「賃借人が入居した当時と同じ状態に戻すこと」ではなく、「賃借人の故意や不注意、通常の使用方法に反する使用など、賃借人の責任によって生じた汚れや破損などを復旧すること」とされています。つまり、賃借人が普通の生活をしていれば生じる程度の汚れや傷については、賃借人は原状回復義務を負わないことになります。
したがって、ハウスクリーニングが必要となる理由が、あなたの故意や不注意によって生じた汚れや破損によるものではない場合には、それは大家さんの負担で行われるべきものと考えられます。
賃貸人が話し合いに応じてくれなかったり、法律のことで不安がある場合には、お近くの司法書士等、法律の専門家に相談されることをお勧めします。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 飯島克仁)
※埼玉新聞平成29年4月6日から転載