■経営者のための相続・遺言(Vol.2)~戸籍謄本が本籍地以外でも取得可能に!知っておきたい新制度のポイント~
令和6年3月1日から、本籍地以外の市区町村役場の戸籍窓口で、戸籍証明書(コンピュータ化された戸籍謄本)や除籍証明書(コンピュータ化された除籍謄本)を取得できるようになりました。これを「戸籍の広域交付制度」と言います。
従来、戸籍証明書等は本籍地の市区町村役場でないと取れませんでした(ただし、現在戸籍の証明書ならコンビニで取得できる自治体もあります)。人が亡くなって不動産や預貯金の相続手続をする場合、基本的には、亡くなった人(「被相続人」と言います)の出生から死亡までの一連の戸籍証明書と、相続人全員の現在の戸籍証明書が必要となります。たとえば、被相続人の本籍地がA市、B市、C市などと転々としていた場合、従来は、それぞれの市区町村役場に戸籍証明書等を請求していました。しかし、戸籍の広域交付制度により、一ヵ所の役場の戸籍窓口で被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍証明書を取得できるようになったのです。
広域交付制度で戸籍証明書等を請求できるのは、戸籍に記載されている本人、その配偶者、直系尊属(親、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)となります。兄弟姉妹の戸籍については広域交付制度では取得できません。
被相続人が親である場合、子は親の直系卑属ですから、広域交付制度を使ってどこの役場でも親の出生から死亡までの一連の戸籍証明書を請求できます。被相続人が配偶者である場合も、配偶者の戸籍は広域交付制度で取れるので、出生から死亡までの一連の戸籍証明書を一ヵ所の役場で取得可能です。
広域交付制度では、コンピュータ化(電子データ化、画像データ化)されていない一部の戸籍や除籍については取得することができません。ただし、紙の除籍や改製原戸籍でもほとんどの場合、画像データ化されており、広域交付制度で取得できます。なお、戸籍の附票(その戸籍が作成された以降の住所の移り変わりが記載された書類)については、広域交付制度の対象外です。戸籍の附票が必要な場合は、本籍地の役場で取得してください。
戸籍の広域交付制度の注意点としては、請求者が市区町村役場の戸籍窓口に行って請求する必要があるということです。郵送や代理人による請求は広域交付制度ではできません。また、広域交付制度による請求の際は、運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きの身分証明書の提示が必要です。
なお、被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍証明書を、広域交付制度を使って請求する場合、役場で非常に時間がかかる可能性があります。即日交付できない場合があるとホームページに記載している役場もありますので、具体的な運用は窓口となった役場にご確認ください。
(司法書士 柴崎 智哉)
※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和6年11月1日から転載