埼玉司法書士会

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■経営者のための相続・遺言(Vol.4)~合同会社と相続~

 日本には株式会社をはじめ、有限会社(現在は設立はできません)や合同会社などいろいろな会社の種類があります。その中でもここ数年、合同会社が着目されるようになりました。商工会議所の会員の皆様も一度は聞いたことがある、または知り合いが経営している、もしくは実際に経営していらっしゃる方がいるかと思います。皆様がよくご存じの有名な合同会社といえば、アマゾンやアップルの日本法人、大手スーパーの西友、最近ではメルセデス・ベンツの日本法人も合同会社になりました。

 株式会社と合同会社の違いについての具体的な内容はここでは触れませんが、株式会社と非常に似ている会社です。ただ、決定的に違うことの一つとして、株式会社には株式という概念がありますが、合同会社には株式というものが存在せず、その代わりに持分という概念が存在します。皆様もご存じだと思いますが、株式は価値のある財産として相続の対象になり、株式を相続して株主となれば、株主総会に出席したり、その株式を第三者に売り渡すことができます。

 一方で、持分は株式と取り扱いが異なります。合同会社の社員(出資者)が亡くなると、原則として相続人は持分の承継(相続)はできず、持分の払戻しを受けることになり、遺産分割の対象となります。しかし、合同会社の持分を相続人に承継させたいと考えている方もいらっしゃるかと思います。そのためには、持分を相続人に承継させるという内容の定款の定めが必要となります。さらには、その定款の定めがあれば特定の相続人に持分を相続させるという内容の遺言書も作成することができると考えられています。

 このように、株式と持分とでは承継(相続)についての取り扱いが異なります。取り扱いが異なる理由として、株式会社と合同会社では、人の関わり方の形態が異なっているという点を挙げることができます。株式会社は第三者も含めて広く出資を募る形態であるところ、合同会社は出資者の人的つながりが強い(顔見知り程度ではなく、信頼関係がある程度形成されている)形態です。両者の違いは他にもありますが、この点は両者の違いを理解するうえで重要です。

 もし、合同会社の経営者の方で会社を相続させたい、あるいは引き継ぎたいといった考えをお持ちの方がいらっしゃいましたら、早い段階からお近くの司法書士へご相談することをお勧めいたします。

(司法書士 染谷浩介)

※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和7年3月1日から転載

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