■近所の人が飼っている大型犬に噛みつかれた
私が住んでいる町内に大型犬を飼っている人がいます。その犬は庭で放し飼いされていますが、とても気性が荒く、人がその家の前を通るといつも門扉までやってきてほえてきます。先日、私がその家の前を通ったところ、門扉に鍵がかかっておらず、犬が道路まで飛び出してきて私の腕にかみつき、私は全治1カ月の怪我を負ってしまいました。私が飼い主と治療代などについて話し合おうとしても、飼い主は「犬がやったことで自分は関係ない」と取り合ってもらえません。飼い主に責任はないのでしょうか。
まず、動物の愛護および管理に関する法律の中で動物の所有者の責務が定められています。その責務とは、動物の所有者が、動物の管理に関する責任を十分に自覚して、その動物を適正に育てたり保管することによって、動物が人の生命、身体や財産に害を加えたり、生活環境に危険を生じさせたり、人に迷惑をかけたりすることのないように努めることです。このため、飼い主は飼い犬が質問者に噛みついて怪我を負わせたことについて「自分は関係ない」と言うことはできません。
それでは、今回のように飼い犬が他人に怪我をさせてしまった場合、飼い主はどのような責任を負うのでしょうか。
この点、民法は「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。」として動物の占有者などの責任を定めています。したがって、飼い主は飼い犬が質問者に対して加えた損害を賠償する責任を負います。この損害賠償の例として、治療費や病院に通うときの交通費が挙げられます。
他方、民法の同じ条文で、「(動物の占有者等が)動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。」として、動物の占有者などが相当の注意を払っていたときは責任を負わない旨を定めています。相当の注意を払っていたかどうかを一律に定めることは難しく、実際の裁判では個々の具体的な事情を総合的にみて判断されているようです。しかし、この注意の相当性を判断するときは、飼い主に責任が発生していることが前提になります。このため、民法は、動物の占有者などに対して厳しい注意義務を課しているといえます。
犬に限らず、動物を飼うときは適切に管理することを心がけましょう。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 窪 秀之)
埼玉新聞 令和2年8月6日から転載