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■「経営者のための会社法務」~きちんと定款を整備していますか?~-Vol.1

 会社には、会社運営の基本規則として定款を備え置く必要があります。定款は、会社設立の際に必ず作成しています。そして、会社の設立以降にも、登記や許認可、補助金等の申請、金融機関との口座開設の際に提出を求められることがあります。


 株式会社の定款には、会社の商号、目的、本店の所在地等の必ず記載しなければいけない事項(絶対的記載事項)の他、株式の譲渡制限に関する規定や役員の任期を延長する等定款に規定しなければ効力が発生しない事項(相対的記載事項)等が規定されています。定款の記載事項は、登記がされない事項も含まれますので、定款の現行の内容が確認できないと、会社の運営に支障をきたす場合もあります。


 株式会社の定款の記載事項を変更する場合には株主総会の特別決議が必要となり、商号や目的、本店等の登記に記載されている事項については、株主総会議事録を添付して登記申請をします。そのため、定款変更のための株主総会を開催して定款変更を行った際に、議事録のみ作成して、定款(書面)に変更後の事項を反映することを忘れてしまうケースがあります。また、設立時のままで会社法等の法令改正に対応していない場合も見受けられます。そのため、補助金申請等で定款を添付した際に、会社の現状と合致していない旨の指摘を受ける場合も見受けられるので、常に見直して最新の状態にしておく必要があります。定款の見直しを行う際には、会社の現状を登記事項等に合致させ法令改正に対応することは勿論のこと、会社の実情に合った見直しを行うことが必要です。


 特に有限会社については、平成18年の会社法改正で、有限会社制度が廃止され、株式会社制度に統合されています。有限会社法時代に作成された定款については、統合に伴う変更については、定款に規定されているものとしてみなされる規定がありますので、必ずしも定款変更等の手続が必要となる訳ではありません。もっとも、みなし規定により変更されている規定についても、現行法の規定に沿った定款に修正しておくことは、会社の円滑な運営の視点から不可欠であると考えられます。
 平成18年会社法改正では、株式会社において、株式を譲渡するときは取締役会等の承認を要するとしている会社については、役員の任期を選任後10年以内の事業年度に関する定時総会終結のときまで延長できるようになりました。役員の任期については、登記されません。そのため、定款の規定だけがその確認手段となっていますので、定款変更をされた場合には議事録の作成とともに、定款の修正を忘れない様にすることが大切です。


 また、平成18年会社法の改正では、株式会社では様々な機関構成を採用できるようになり、旧商法において必須とされていた取締役3名、監査役1名の役員の最低員数が変更され、取締役1名のみの会社が認められるようになりました。定款の内容の確認、修正を検討される際には、併せて定款の内容の見直しを行い、自社の実情に合わせた変更を検討することをお勧めします。
 定款の修正や見直しについては、司法書士にご相談ください。
(司法書士 吉田 健)

 

※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和3年9月1日から転載

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