埼玉司法書士会

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■「経営者のための会社法務」(Vol.3)~役員変更登記、お忘れなく!~

 これまで、経営者のための会社法務と題して、会社運営の骨格として重要な定款や株主名簿について取り上げました。今回は会社運営に携わる役員等について取り上げます。今回は、取締役、監査役のことを「役員」とし、役員とそれ以外の役職をまとめて「役員等」として説明を進めていきます。

 さて、経営者のみなさまは役員変更と聞くと、どのようなことをイメージされるでしょうか。「うちの会社はずっと私が社長だから」、「役員変更は大きな会社だけやれば良いのだよね」、といった心の声が経営者のみなさまから聞こえてくるような気がします。みなさまがお考えの通り、役員変更登記が必要ない会社も存在します。大半の有限会社や合同会社等においては、役員や社員の追加や交代等がなければ変更登記をする必要はありません。一方で、株式会社では、一定期間を過ぎると役員等の任期が満了してしまい、同一人物が引き続き役員等となる場合でも、再度役員等への選任手続きをし、役員変更登記をしなければなりません(役員を選任するために株主総会を開催することになりますので、前稿で触れた株主名簿の整備も大切ですね)。

 では、任期満了により役員変更をする場合、その任期満了の時期はいつになるのでしょうか。答えは、前々稿で取り上げた定款と会社法の中にあります。定款に定めがない場合、取締役は「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と会社法に定めがあります(一般的な会社の場合)。また、一定の条件を満たした会社は、定款で2年とあるものを10年以内に伸ばすことができます。そして、任期が満了する時期の株主総会において、後任の役員等が(もちろん、前任者と同一人物の場合でも)選任されたら、2週間以内に変更登記を申請しなければなりません。2週間を過ぎた場合には、登記義務を怠ったことになり過料が科される場合があるので注意が必要です。もっとも、2週間が経過したとしても、早めに登記を申請すれば過料が科せられないことが一般的です。早めに手続きをするよう心がけましょう。

 役員の任期が満了しているにもかかわらず選任手続きや登記手続きを長期間放置してしまった場合は、一定の手続きを経て、会社は解散したものとみなされ、法務局の職権で解散登記がなされてしまいます(最後に登記があった日から12年経過後に所定の手続きを経て解散したものとみなされます)。そして、解散したものとみなされた後3年が経過すると、会社を継続することができなくなってしまいます。解散登記がされた後に会社継続の登記手続きをするには、役員変更登記をする以上の手間と費用がかかったり、先ほど記載した過料が科されたりする場合があります。

 このように、役員変更登記を放置すると余計な手間や費用が発生することになりますので、役員変更を忘れないよう管理する必要があります。なお、役員変更手続きは、役員構成、任期、後継者の育成等、様々な検討をした上で行うことが大変重要です。御自身の会社に合った対応を検討するにあたり、ぜひ、会社法務の専門家である司法書士に御相談ください。

(司法書士 杉田真友)

※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和4年1月1日から転載

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