■せっかく買った倉庫が契約後に全焼?
私は、友人から倉庫を代金100万円で購入することに決め、1週間後に売買代金を支払って倉庫の引き渡しを受ける約束をしましたが、引渡し日の前日に落雷により倉庫が全焼してしまいました。この場合でも私は売買代金を全額支払う必要があるのでしょうか? 友人との間では、口約束のみで、売買代金の金額と引き渡し日しか決めていませんでした。
不動産などの高額な物品の売買をする場合には契約書を作成することが普通です。もっとも、契約は当事者間の約束事ですので、書面によらない口約束でも有効に成立することとなります。一般的な不動産の売買契約書では、引き渡し前に天災等により消滅した場合、買主は代金の支払いを拒むことができる旨が定められています。本問のような口約束の場合、このような約束まではしておりませんので、倉庫が全焼してしまった場合において代金の支払い義務があるのかが問題となります。
そもそも、売買契約は、口約束のみであったとしても、お二人の意思が合致している以上、有効となります。売買の合意の時点で、倉庫の所有者は売主(ご友人)から買主(ご質問者)に変わるため、法律上は、買主は、代金の支払いを拒むことができないこととなり、全焼による損害は、買主が負担することになります。
しかしこのような取扱いには、従来から多くの批判がありました。そこで、法律の改正により、本年4月1日以降に締結された売買契約については、売買契約の成立後引渡し前までに売買契約の目的物が消滅してしまった場合、買主は代金の支払いを拒むことができるようになります。売買契約の時期によって、法律の適用が異なってくるので注意が必要です。
もっとも、本年4月1日以降に締結された売買契約であっても、契約の内容をどのように定めるかは、買主と売主が自由に決めることができます。従って、特約により、このような損害を買主の負担とすることも可能です。そのため、売買契約に際しては、売買の条件などを明確にするため売買契約書を作成するようにした方が良いと思われます。また、売買契約書が作成されたケースであれば、ご自身でその内容をよく確かめるか、それが難しいようでしたら、司法書士などの専門家に相談することが大切です。
詳しくは、お近くの司法書士事務所へお尋ねください。
(司法書士 杉田 裕介)
埼玉新聞 令和2年3月5日から転載