
■インターネット・ショッピング(通信販売)にクーリングオフは使える?

最近、毎日の生活の中で、便利なインターネット・ショッピングを利用することが多くなりました。この前もネットで商品を閲覧、春用コートを購入したところですが、後日商品が自宅に届いてから、サイズ違いのものを購入してしまったことに気づきました。クーリングオフによる取消、返品ができないものでしょうか。

クーリングオフ制度とは、訪問販売など一定の取引について、消費者が契約をした後に冷静に考え直す時間を与え、一定の期間内であれば、一方的に無条件で契約を解除できる制度です。例えば、自宅をリフォーム業者が突然訪問してきたとします。業者に一方的に話をされて、雰囲気にのまれてしまい、あれよあれよという間に、思わず契約をしてしまった、そんな時に消費者を救う制度として用意されています。「契約は守らなければならない」という大原則の例外ですから、クーリングオフできる取引は法律や約款などに定めがある場合に限ります。それでは、インターネットによる通信販売で、思わず購入してしまった商品に対して、クーリングオフの制度が使えるのでしょうか。
結論として、通信販売は、クーリングオフの対象にはなりません。今回のケースにおいては、サイズの勘違いがあったにせよ、自主的に商品を選択し、購入しています。先ほどの訪問販売のような「不意打ち性」がないため、一方的に無条件に契約を解除できるクーリングオフという強力な権利の行使を認めることができないのです。
通信販売における返品については、事業者が決めた特約「返品特約」に従うことになります。「返品特約」が定められていない場合、商品を受け取った日を含めて8 日以内であれば、消費者が送料を負担することで返品できますが、実際には、この「返品特約」が定められていることがほとんどです。この特約は、目立たない小さな文字で書かれていることもありますので、丁寧に画面を確認することが必要です。「返品特約」は、特にインターネットでの通販の場合、ウェブサイト内だけでなく、商品を購入する直前の確認画面にも、必ず返品条件を記載しておく義務があるとされています。
また、購入した商品とは明らかに異なる商品が届いたり、商品が破損していた場合などは、詐欺行為や契約不履行などの問題になりますから、クーリングオフとは関係なく、返品や交換、修理の要求、契約解除の請求ができます。
通信販売を利用する時は、トラブルを避けるために、販売条件や業者に関する情報などをよく確認して、実際にお店に出向く時以上に慎重になることが大切です。特に不審に感じるサイトの利用は絶対に避けましょう。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 杉田 裕介)
埼玉新聞 令和4年5月12日から転載