埼玉司法書士会

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■フードデリバリーサービスの報酬が支払われない

 副業として、フードデリバリーサービスに登録して休日に飲食物の配達をしているのですが、報酬がなかなか支払われず、困っています。

 令和6年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」が施行されました。この法律は、これまで十分に保護されていなかったフリーランスとして働く方々のため、発注事業者との間の取引の適正化を図り、その就業環境を整えることを目的としています。

 この法律の特徴として、フリーランスをカメラマンやイラストレーターといった業種で限定せずに「業務委託の相手方である事業者で従業員を使用しないもの」と定義し、フリーランスが物品の製造・情報成果物の作成・役務の提供といった業務を事業者から委託された場合に適用されるとしたことが挙げられます。広く副業や一人会社も含まれる反面、事業者でない者との取引は対象とならないのでご注意ください。

 次に具体的な中身を説明します。この法律が適用される取引では、発注事業者は取引条件を書面などで明示することが義務付けられます。さらに、発注事業者が従業員を使用する事業所である場合は、発注事業者は委託した業務が終了した日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定して期日内に報酬を支払うことや、フリーランスに対するハラスメント対策のための体制を整備することなどが義務付けられます。加えて、委託する業務が一定期間以上行うものである場合には、発注事業者は育児介護などと業務の両立について配慮し、業務委託契約を中途解除・更新拒否するときは事前予告や理由開示をするときなどが義務付けられます。

 これらの義務に違反しているときは、フリーランスは違反の内容に応じて関係公的機関に申し出ることができ、申し出を受けた公的機関は、調査・勧告・命令・公表・罰則などの対応を行います。なお、この申出を理由に、発注事業者がフリーランスに対し、取引停止等などの不利益な扱いをすることは禁止されています。 

 その他、国はフリーランスの相談に応じるため必要な体制を整備することとされ、例えば、厚生労働省から委託された東京の弁護士会が「フリーランス・トラブル110番」を運営しています。

 それでも報酬が支払われない場合は、法的手続により発注事業者に請求する方法も考えられ、請求額によっては司法書士も代理人として対応することができます。

 詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 武井光崇)

埼玉新聞 令和7年3月6日から転載

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