■リゾートマンションを手放したい
私はバブル景気の頃に、観光地のリゾートマンションの利用権を取得するため共有持分を購入しました。共有者は私を含め20人以上います。これまでは運営会社が管理費を支払っていましたが、その会社が倒産し、私を含めた共有者に対して管理費の請求書が届くようになりました。そのような請求をされても誰も支払いに応じず滞納額は膨れ上がっています。
もうその部屋を使うこともありませんので、共有持分を手放して、お金の請求から解放されたいのですが、簡単には手放せないようです。
マンションの共有者は持分にかかわらず、管理費全額の支払義務を負います(連帯債務)。今後の管理費請求を免れるためには共有持分を手放さなければなりませんが、誰かに譲渡するしかなく一方的に放棄することはできません。
共有持分の譲渡を受ける者は、滞納管理費の支払義務を承継し、部屋を自由に処分変更できないので見つかりにくいです。また、共有者全員で足並みをそろえて処分しようにも、中には共有持分を手放すことに難色を示す者がいたり、相続が生じていたりと関係が複雑で解決しにくいケースもあります。
このような場合には、共有物分割訴訟を提起して、単独で不動産を所有したい共有者が、共有持分を手放したい共有者に代償金(価格賠償)を支払い、共有持分を取得する内容の判決(価格賠償)をもらうことを目指します。
共有者全員が共有持分を手放したい場合には、競売にかけることを命じる判決(換価分割)を目指すこともあります。ただし、競売で手続費用を賄えない場合は手続が取り消される場合がありますので検討が必要です。
これらの訴訟は、有する共有持分の評価額の3分の1の額が140万円以内であれば、認定司法書士は代理人として受任可能です。その額を超える場合は本人訴訟として訴状を作成することもできます。
また、管理組合側が管理費の回収のために競売を申立て、結果的に共有持分を手放せるということもあります。
司法書士や弁護士に相談したいけれど、費用が心配という方は、「日本司法支援センター」(通称・法テラス)の民事法律扶助制度をご活用ください。法テラスでは、資力基準(収入や資産の有無)を満たせば無料相談を受けられ、訴訟手続などの費用の立替えも行っています。立替費用は、後日分割で法テラスへ償還する必要がありますが、月額5千円程度からの金額設定も可能なため、生活状況に応じて無理のない償還金額を申し込むことが可能です。
相談内容のようなマンションの共有持分に関するご相談は、詳しくは、お近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会(☎048-863-7861)へお尋ねください。
(司法書士 片桐英夫)
埼玉新聞 令和5年10月5日から転載