埼玉司法書士会

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■任意後見制度のメリットとは?

夫に先立たれて一人暮らしをしています。将来自分が認知症になったときに備えて、身近な人に老人ホームの入所手続きや自分の葬儀・身辺整理を頼んでおくことはできますか。

認知症高齢者など判断能力が不十分な方は、老人ホームの入所契約を一人で行うことが難しい場合があります。また不利益な契約をしてしまい、悪質商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力が不十分な方を保護し、支援を行う成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の二つの種類があります。

「法定後見」は、既に判断能力が減退している方が利用する制度です。親族等の申立てにより家庭裁判所が適切な後見人等を選任し、その事務を監督します。報酬も後見人等の申立てにより家庭裁判所が本人の財産から相当な額を付与します。

もう一つの「任意後見」は、相談者のように判断能力があるうちに利用する制度です。将来の認知症などによる判断能力の減退に備えて、あらかじめご自分で信頼できる人に支援して欲しいことを依頼する契約をしておくものです。この任意後見契約は、公証人作成の公正証書で行います。公正証書には財産管理のほか、希望に沿った老人ホームを探し入所契約をすること、空家になった自宅を売却することなど支援内容を盛り込みます。

将来、ご本人の判断能力が減退した場合、ご本人等の申立てにより、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。これにより任意後見契約の支援が開始します。任意後見監督人は、任意後見人が不正を行わないよう監督します。任意後見監督人の報酬も申立てにより家庭裁判所が相当な額を付与します。

任意後見人の職務はご本人の死亡により終了するので、その後の葬儀や身辺整理を依頼するには、任意後見契約とは別に、死後事務委任契約をしておく必要があります。

ご自分で設計した老後の生活を自らが決めた任意後見人に託せること、任意後見人の報酬の有無、具体的な額についても公正証書で決めておくことができるのが任意後見のメリットです。詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会へお尋ねください。

(司法書士髙橋明子)

埼玉新聞 令和2年12月3日から転載

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