■会社から「残業代は固定だ」と言われました。
私は運送会社で事務員として働いています。労働契約書には「賃金月額27万円(固定残業代5万円を含む。)」と書いてあります。
業務量が多過ぎて、始業時間より前に出社し、夜遅くまで残業しています。休憩時間に休憩はできませんし、土日にも出社することもあります。
これで残業代5万円は安過ぎると思い、上司に申し出たら、「残業代は固定だから。」と言われて取り合ってもらえませんでした。固定残業代制度が設定されている会社では、どんなに働いても残業代は変わらないのでしょうか。
会社は、実際の時間外労働時間から算出される残業代が固定残業代の金額を超える場合には、その差額を払わないといけません。
固定残業代制度とは、実際の労働時間が、設定している時間外労働時間未満であっても、満額の固定残業代を支給しなければならない制度です。
この制度は、会社側からすれば、給与計算の事務処理の軽減や、社員がだらだらと残業をしないようにするといったメリットがあり、労働者側からしても、設定されている時間外労働時間未満であっても満額の固定残業代を受け取れるというメリットがあることから導入されていることが多いです。
「残業代の金額は固定だから、何時間働こうとも残業代は変わらない。」という制度ではありません。
そのため、会社は固定残業代制度を設けていても当然に労働時間の管理をしなければなりませんし、設定した時間外労働時間を超えた場合には、固定残業代以外に超過分の残業代を払わないといけないのです。
固定残業代制度は、そもそも契約の内容となっているか、通常の労働時間に対応する賃金と割増賃金相当部分が明確に判別できるかどうか(判別可能性・明確区分性の問題)、固定残業代が実質的に時間外労働に対する対価となっているかどうか(対価性の問題)という論点で、無効とされている裁判例もあります。
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(司法書士 片桐英夫)
埼玉新聞 令和5年5月11日から転載