■保証ルールの見直し対応
先日、自営業の友人Aから、「事業用資金を借り入れようと思うんだけど、保証人が必要でさ…、事業は軌道に乗っているし、決して迷惑はかけないから、保証人になって欲しい。ついては、この契約書に署名と押印をお願いしたい。」と相談されました。彼は何をやってもうまくできる人間なので心配はしていませんが、その日は検討したいということで帰ってもらいました。ところで、民法改正によって保証に関するルールが変わるという記事を新聞で目にしました。具体的にどのように変わるのでしょうか?
民法の一部を改正する法律(以下、改正民法といいます)は、2017年5月26日に成立しました。主な改正点の一つが「保証ルールの見直し」です。安易に他人の債務の保証人になったことにより、借金を肩代わりする羽目になり、破産や自殺に追い込まれるなどの保証をめぐるトラブルは後を絶たず、04年に民法の保証に関する規定の一部改正が行われ、保証契約は書面ですること、特にハイリスクと言われる貸金等根保証について一定の制限を課す等のルールが設けられました。
今回の改正ではさらに、根保証に関するルールの対象を、貸金等根保証契約以外の根保証契約一般に広げること、保証人に対する情報提供のルールを設けること、事業のための債務について個人が保証人になるときは、原則として、保証意思宣明公正証書を作成しなければならないこと等の新しいルールが設けられることになります。
ご相談のケースでは、まず、Aさんはあなたに対して、収支状況や借金の有無、金額などの情報を提供しなければならなくなり、「事業は軌道に乗っている」という説明だけでは足りません。しかも、これが事実と異なっていたときは、あなたは後から保証契約を取り消すことができる場合があります。また、「契約書に署名と押印を」とのことでしたが、これだけでは保証契約は成立せず、契約に先立って、公証人に対して保証人になる意思を伝え、保証意思宣明公正証書を作ってもらうことが必要になります。
とはいえ、新しいルールが適用になるのは、改正民法が施行される20年4月1日からです。また、Aさんが返済できなくなった場合、保証人になるあなたがAさんの借金を肩代わりしなければならないことは何ら変わりありませんので、慎重に検討しましょう。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士・相原雄憲)
※埼玉新聞平成30年7月5日から転載