■保証債務-個人保証人の保護の拡充-vol.4
1 保証とは
保証とは、主債務者が債務の支払をしない場合に、これに代わって支払をすべき義務のことをいいます。保証には、契約時に特定している債務の保証(例、住宅ローンの保証)と、いわゆる根保証と言われる将来発生する不特定の債務の保証(例、継続的な事業融資の保証)があります。
2 個人保証人の保護の拡充-包括根保証の禁止の対象を拡大-
貸金等債務以外の根保証(例、賃貸借や継続売買取引の根保証)については、想定外の多額の保証債務や、想定していなかった主債務者の相続人の保証債務の履行を求められる事例が少なくなりません。例えば、借家が借主の落ち度で消失し、その損害額が保証人に請求されるケースや、賃借人が長期にわたり賃料を滞納したケースなど、親戚や知人である個人保証人に過大な責任の履行が求められることがあります。
新法では、①極度額の定めの義務付けをすべての根保証契約に適用、②保証期間の制限(原則3年最長5年)については現状維持(賃貸借等には適用なし)、③特別事情(主債務者の死亡、保証人の破産・死亡等)がある場合の根保証の打ち切りはすべての根保証に適用となりましたが、主債務者の破産等の事由で賃貸借等の根保証は打ち切りとはなりません。
3 個人保証人の保護の拡充-事業用融資の第三者個人保証人の保護-
保証制度は、特に中小企業向けの融資において主債務者の信用の補完や経営の規律付けの観点から重要な役割がある一方、個人的な情義等から保証人となった者が想定外の多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれる事例が多々あります。
そこで新法では、事業用融資の第三者個人保証に関して次のような規定を設けました。事業用融資の保証契約は、公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ効力を生じないこととなりました。ただし、主債務者の状況を十分に把握することができる立場の法人の役員、総株主の議決権の過半数を有する株主、共同経営者、事業に現に従事している主債務者の法律上の配偶者には適用がありません。
(1)保証意思の確認
公証人は、保証意思を確認する際には、保証人が主たる債務者の財産状況について、情報提供義務に基づいてどのような情報提供を受けたかを確認し、保証人がその情報も踏まえてリスクを十分に認識しているかを見極めます。ですから保証人の保証意思を確認できない場合には、公正証書の作成はできません。
(2)保証意思確認宣明公正証書
この保証意思の確認は保証意思宣明公正証書によってなされ、保証契約の契約書(保証契約公正証書)とは別途作成されるもので、保証契約締結の日前1ヶ月以内に行われる必要があります。公正証書作成に当たっては、代理人嘱託はできませんので必ず保証人本人の出頭が必要となります。手数料は保証額に関わらず1通1万1000円です。
4 個人保証人の保護の拡充-情報提供義務-
現状では、主債務者は自らの財産状況等を保証人に説明する義務がないため、保証人が主債務者の財産状況を知る術がありません。紙面の都合上詳細はお伝えできませんが、新法では、①事業の債務保証を委託する場合には、主債務者は保証人への財産及び収支の状況、その他債務の履行状況、担保提供等の情報提供義務、②保証一般において、主債務者は期限の利益を喪失したときは、喪失を知った時から2ヶ月以内に保証人に通知する義務を有し、③債権者は、主債務者から委託を受けた保証人から請求があったときは、主債務者の同意を得ずに保証人に対して情報提供ができるという改正がなされています。
(埼玉司法書士会債権法改正対応委員会 知久 公子)
※越谷商工会議所会報「鼓動」令和2年1月1日から転載