埼玉司法書士会

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■債務整理の二次被害

 何社からも借入れをして生活をしてきましたが、返済ができない状態でした。「借金全額免除!」というネット広告を見て専門家に相談して任意整理をしました。しかし、結果として借金が減るどころか生活がさらに苦しくなりました。どうしたらよいのでしょうか。

 任意整理が整い、ほっとしたところでそのような事態になりお辛いと存じます。一部の専門家(弁護士・司法書士)がずさんな債務整理をしたことにより、依頼者が以前より経済的に苦しい状況に陥っていることが社会問題として取り上げられています。今回のご相談はそのようなお悩みではないでしょうか。当初相談した専門家とは違う専門家に今一度相談してください。

 最近、テレビや新聞などで、専門家が関わった債務整理による二次被害についての報道がありました。債務整理を勧めるインターネット広告等を大量に出す弁護士事務所・司法書士事務所が存在し、「借金全額免除!」「国が認めた借金救済制度」などといった誘い文句で多くの依頼を受けているというものです。本来ならば、相談者の生活状況では破産申し立てを選択すべき案件であるにもかかわらず、無理な返済計画を立て任意整理に誘導することによって、最終的に債権者への返済が滞ってしまい、相談前より生活が苦しくなったというケースが報告されています。また、専門家が直接面談をしないで事務員任せにしている、報酬があまりにも高額といった声も寄せられています。

 債務整理は、専門家が相談者の個別具体的な負債の状況、収入の見込み、所有資産等の生活状況を聞き取り、相談者に寄り添いながら、今までの生活状況を改善しつつ生活再建を図っていくものです。そのためには、専門家が相談者と直接面談をすることが必須です。

 債務整理の最終的な目的は「将来にわたり生活を営めるようにすること」という生活再建です。債務を支払いながら生活を営んでいくことが難しい場合は、破産申し立てを選択するべきでしょう。また、失業、病気、障害等の理由で経済的に困窮している場合は、債務整理という手段を選択するだけではなく、生活保護等を活用しながら生活再建を図っていく必要があるかもしれません。

 多くの司法書士は、これまで高金利に苦しむ市民を救済するため多重債務事件に積極的に携わってきました。そのような中で、一部の司法書士とはいえ、「債務整理二次被害」の当事者として報道されていることは、大変残念なことです。なお、日本司法書士会連合会は、「債務整理の処理に関する指針」、「債務整理事件における報酬に関する指針」等のガイドラインを定めており、司法書士は指針に沿って債務整理業務を行うことが求められています。多重債務で苦しむ方が一人でも生活再建を経て安心して生活できるように、司法書士は多重債務問題に積極的に取り組んでまいります。

(注)司法書士が債務整理の依頼を受けることができる金額は、1社あたり140万円以下という制限があります。

 詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(電話:048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 関根康彦)

埼玉新聞 令和6年8月8日から転載

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