埼玉司法書士会

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■共有不動産の注意点

 この度、実家の不動産について、私を含めた3人で相続することになりました。他の相続人との関係は良好ですが、今後、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか。

 不動産を複数人で所有することを共有と呼びますが、1人だけで所有する場合と比べると、気を付けるべきことがあります。それは、共有の場合、不動産の使用や管理、処分などについて、他の共有者との間で話し合いにより決める必要があるからです。

 例えば、不動産を誰が使用するかを決めるには、共有者の持ち分価格の過半数の賛成が必要となり、建物を取り壊すには、共有者全員の賛成が必要です。不動産を売却するときは、共有者の持分だけの売却でよければ、売却を希望する共有者の賛成だけで足りますが、不動産全体を売却しようとすると、共有者全員の賛成が必要となります。

 また、不動産を所有していると固定資産税が発生しますし、定期的に除草や修繕などの維持管理を行わなければなりませんので、この際の費用の負担者についても決めなければなりません。原則として、共有者の持ち分の割合に応じて費用を負担することになりますが、話し合いがまとまれば、不動産を使用する相続人だけを負担者とすることもできます。

 このように、不動産を共有するときは、他の共有者と良好な関係を維持することが大切です。他の共有者の行方が分からなくなった場合や、話し合いができないなど関係が悪化した場合、裁判所の手続きで事態の打開を試みることはできますが、余計な支出や労力を負うことになります。

 今回は、不動産を相続したということですので、共有することに伴う煩わしさを避けるという意味では、遺産分割協議を行い、相続人のうち1名が相続するというのも選択肢の一つです。将来、共有者の誰かが亡くなれば、ここでも相続が発生し、共有者の人数がさらに増えることにより、話し合いをまとめるのが難しくなることが予想されます。また、不動産を売却する場合にも、共有者の一人でも認知症等により判断能力が低下していると、その人の持分を売却することができず、成年後見制度の利用を求められることになるからです。

 令和6年4月からは、不動産を相続で取得した場合の名義変更の登記(相続登記)が義務化されます。相続登記を怠ると行政上のペナルティの対象となりますので、ご注意ください。

 本記事の内容について、詳しくは、お近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 嶋根琢磨)

埼玉新聞 令和6年3月7日から転載

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