■利息の利率が年3%に変更?
2020年の債権法改正によって、法定利率が年5%から年3%になると聞いたのですが日常生活にはどのように影響するのでしょうか。利率は、年20%までと聞いたことがあるのですが、それとは違うのですか?
皆さんは、「払い過ぎた利息を取り戻します」という過払い金請求のCMをテレビやラジオから見聞きしたことがあると思います。そこに「債権法改正によって法定利率が年3%に変更」というニュースが入ってくると、皆さんの中には「借金の返済額が少なくなるのではないか」「過払い金が発生するのではないか」と考える方もいらっしゃるかと思いますが、今回の改正はこれとは違うものになります。
まず、利息の利率には、法律上定められている法定利率と、当事者間の約束によって決められる約定利率があります。一般的にカードローンやキャッシングは利息制限法に基づいた約定利率が適用されています。利息制限法とは、借金の利息の上限を定めたもので、これを超える利息は無効となります。この制限が「年20%まで」の根拠になります。つまり利息制限法の範囲内で貸す側と借りる側の約束で決めた利率を約定利率と言います。
今回の改正は「法定利率」の変更です。この変更は日常生活のどのような場面に影響してくるのでしょうか。法定利率とは、利息を支払う合意はあるが利率の約束がない場合の利息の算定に適用されます。例えば、Aさんがお金を貸して、Bさんが「Aさんにお金を借りたので、来年の今日、必ず利息を付けて返します」と、利息を払う約束まではしたが、利率については決めなかった場合に適用されます。また、交通事故の損害賠償の遅延損害金なども、約定利率の定めがない金銭債務になりますので法定利率が適用されます。また、商行為によって生じた債務についても、改正によって民法に規定する法定利率を適用することになります。
この改正は、昨今、法定利率が市中金利を大きく上回る状態が続いていることなどを理由になされたものです。将来的に法定利率が市中の金利動向と大きく離れたものになることを避けるため、金利動向に合わせて3年ごとに見直しが行われます。このように法定利率が変動する可能性がありますので、当事者間で利率についてあらかじめ約束しておくことがこれまで以上に大切になります。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 来間 直也)
※埼玉新聞 令和元年7月4日から転載