■合同会社はご存知ですか?
私は、個人でガラス細工の製造・販売を行っていますが、事業が軌道に乗ってきたので会社を作ろうと考えています。出資者は私のみで、役員も当面は私のみの予定です。株式会社以外にも合同会社という会社形態があると聞いたのですが、合同会社とはどのような会社でしょうか?
合同会社は、平成18年の会社法改正により新しくできた会社形態で、当初の年間設立件数こそ少なかったものの、近年ではその認知度が高まってきており平成27年度の設立件数は2万件を突破し、新規に設立される会社の約5分の1は合同会社になってきています。
このように合同会社の設立が増加している理由には、合同会社ならではのメリットがあるからです。まず、設立する際の費用が安く抑えられます。株式会社の場合は、定款(会社の根本となる規則のこと)に公証人の認証が必要ですが、合同会社は不要のため公証人手数料(5万円)が不要になります(さらに電子定款で作成すれば印紙(4万円)を貼付する必要もありません。)。また、設立時の登録免許税も、株式会社は最低15万円ですが、合同会社は最低6万円で済みます。さらに、設立後のランニングコストも抑えられます。株式会社は毎年決算公告しなければなりませんが、合同会社にはその義務はありません。また、株式会社の役員は任期(最長10年)がありますので、同じ人が役員を続ける場合でも任期が満了するごとに役員の変更登記をしなければなりません。一方、合同会社の役員に任期を定める必要はありませんので、同じ人が役員であり続ける限りは変更登記をする必要も生じません。その他にも合同会社のメリットはありますが、いずれにしても合同会社は、株式会社と比較して小規模な企業の柔軟な経営に適していると考えられています。あなたのように、個人事業を法人成りして一人で経営するような場合には合同会社の設立も十分に検討する価値があると思われます。また、後々事業を拡大する等で株式会社にしたい場合にも、同一の法人格を維持したまま合同会社から株式会社への組織変更もできます。
会社の設立にあたって株式会社にするのか合同会社にするのか、判断に迷っているようであれば一度専門家に相談するのが良いでしょう。また、合同会社に限る話ではありませんが、合同会社は株式会社と比較して会社内部の規律については定款による自治が大幅に許容されているので、あなたが設立しようとしている会社の目的に適合した定款を作成することが肝心です。定款の中身をどうするのかもよく検討するのが良いでしょう。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 上松隆行)
※埼玉新聞平成29年3月2日から転載