埼玉司法書士会

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■墓地の登記って必要?

 わが家には、先祖代々受け継がれている墓地があり、敷地内に身内も含めた先祖の墓石が沢山あるのですが、その墓地が実際に誰の所有地なのか、よく知りません。
 今般、墓地の囲障(いしょう)の修繕を業者の方にお願いしようと思ったのですが、自分が墓地の修繕をすべき立場にあるのかを疑問に思って業者の方に尋ねたところ、「墓地は税金もかかっていないし、誰の所有物かは気にしなくていい。」と言われました。本当に気にしなくてもいいのですか?

 誰が所有者か気にしなくていい、ということはありません。墓地の囲障を修繕する権原は、原則的に墓地の所有者かその相続人にあり、所有者(所有権登記名義人)が誰であるかは、一般的に、法務局で墓地の不動産登記記録を確認すれば分かります。墓地は非課税地ですが、税金を払わなくていいことと、所有権の問題は別の話です。墓地も不動産(土地)であり、所有者が存在します。
 しかし、登記記録を確認しても、誰が所有者か分からない場合もあります。墓地は、相続登記がなされていないことがままあり、登記名義人はおそらく自身の先祖だけれど、知らない名前になっている(血縁関係に無い方々との共有になっている場合もあります。)ため、誰が現在の所有者なのか確信が持てないケースがあるためです。
 例えば、その墓地の所有者が亡くなった際に、その所有者の自宅(土地や建物等の不動産)については相続人が相続登記をしたものの、墓地の相続登記を失念していた、あるいは墓地の相続登記も必要だとは思わなかった、という方が少なくないのです。
 墓地に限らず、農地や山林等、相続登記がなされていない不動産が少なからずありますが、令和6年4月1日からは、不動産の相続登記が義務化されます。不動産の所有者に相続が発生した場合、相続人が当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければ、原則として10万円以下の過料に処されます。今までは相続登記をしなくても特段支障が無かったケースでも、今後は過料に…という可能性があり、墓地も例外ではありません。
 ご質問の件では、まず墓地の登記記録を確認し、ご自身のご先祖さまが所有権登記名義人であれば、ひとまず囲障の修繕等をする権利があると推定されますが、できればこの機会に相続登記も検討することをお勧めします。
 詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 達脇清将)

埼玉新聞 令和4年10月6日から転載

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