■売れない別荘地が高く売れる?
父は、50年ほど前に別荘地として勧められ、地方の土地を購入しました。結局、別荘は建てずに放置してきましたが、最近この土地を「300万円で買いたい」と業者に言われ、父が乗り気です。私にはあの土地が今時300万円などで売れるとは思えず、困っています。
最近、「原野商法二次被害」という悪質商法による被害が多発しています。昔、別荘地など遠方の土地を高く購入して「原野商法」の被害に遭った方が、今また悪質な業者にお金を騙し取られるという被害が多発しているのです。
いくつかのパターンがありますので、「Aさんが購入したX土地」を例に挙げて見てみましょう。
1つ目は、業者が高額な金額でX土地を購入したいと勧誘し、売買契約を締結します。このとき、もっともらしい理由をつけてなぜかAさんにお金を支払わせますが、いつまでたっても業者からは売買代金が支払われません。実は、Aさんは、いつの間にかX土地より高いY土地を購入する契約書にもサインさせられ、契約上はAさんの支払ったお金はY土地の購入代金とX土地の売却代金の差額として支払ったことになっているのです。このようなパターンは「土地交換型」や「土地取引型」などと呼ばれます。
もう1つは、業者が「土地を売却するために必要だから」などとAさんを勧誘し、前もって測量費や整地費用などの名目でお金を支払わせますが、実際には、実際に掛かる費用より高額であったり、測量や整地などしなかったりするのです。また、「広告を出せば高値で売却できる」などと勧誘して、過大な広告料を支払わせるパターンもあります。もともと売れない土地を高値で売る広告を出しても売れるはずはなく、業者は繰り返し広告料をAさんに支払わせ続けるのです。これらのパターンを「役務提供型」といいます。
いずれのパターンも、見知らぬ業者が言葉巧みに契約を迫ります。昭和の高度成長期に別荘を持ちたいという夢を持って地方の土地を購入した方たちが今、高齢となって子どもに負の遺産を遺したくないという思いから、このような被害にあわれているのです。
お父様の件も、「原野商法二次被害」の「土地取引型」の可能性があると思われますので、すぐに契約しないことが大切です。詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(℡048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 仲野 知樹)
※埼玉新聞 令和元年11月7日から転載