■妻に全財産を譲りたい!
私たち老夫婦には子供が二人おり、それぞれもう立派に独立しているので、いくらでもない私の遺産は妻の生活を保障するために、全部妻にやりたいと考えていますができますか。
第一に遺言が考えられます。全財産を妻に相続させる旨の遺言により、あなたの遺産の全部を奥さまに相続させることができます。
遺言には、公正証書遺言と自筆証書遺言、秘密証書遺言があります。公正証書遺言は、遺言者が通常は公証役場に出向き、公証人の面前で遺言内容を口述して行うこととなります。自筆証書遺言は、遺言者ご自身が自筆で遺言内容を記載しますが、この自筆証書遺言は、自宅等に保管されることが多く、せっかく作成しても紛失したり書き換えられたりするなどの問題がありました。なお、自筆証書による遺言書は封がされている場合は開封せずに家庭裁判所に持参し、検認を受ける必要があります。
そこで、紛争防止や利便さを図るために、令和2年7月10日から「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行され、自筆証書による遺言書を法務局で保管する制度が創設されました。これによると、家庭裁判所での検認が必要ありません。
さらに、遺言書の本文(遺言内容)は、自筆で記載しなければなりませんが、財産目録については、パソコンなどで作成した目録や通帳のコピーなど、自筆によらない書面でもよいものとされました。この場合、財産目録の各ページに署名押印が必要となります。 ところで、冒頭で申し上げた遺言内容の場合、子供たちからそれぞれ遺留分侵害額請求がされると、結果として全財産の4分の1は子供たち2人に与えることになり,その請求に対する清算は金銭ですることとなります。
ただし、ご質問者の場合、母の財産はいずれ子供たちのものになると考えられますので,子供たちからの請求はなされない可能性が高いのではないでしょうか。
第二に、あなたが亡くなられた後に、奥さまと子供たち2人であなたの遺産について、どのように相続するかを話し合い(遺産分割協議をし)、その中で子供たちは相続しない(俗に言う遺産放棄)ことになれば、奥さまがあなたの遺産を全部相続することができます。
第三に、あなたが亡くなられた後、一定の期間内に、子供達がそれぞれ家庭裁判所に出向くなどして、相続放棄の申述を行うことによって、その結果、奥様があなたの遺産を全部相続することができます。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、又は、埼玉司法書士会(☎ 048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 矢嶋義一)
埼玉新聞 令和5年4月6日から転載