■子どものいない方の相続と遺言
私には、子がいません。私の死後、財産は亡くなった姉の子(めい)に遺したいのですが、どうしたらよいでしょうか。なお、夫、両親は亡くなっており、兄弟姉妹も数人亡くなっています。
ご自分の死後、どなたか特定の方に遺産を遺したい場合や、分け方を決めておきたい場合は、遺言書を作成することをお勧めします。
遺言書を作成するときは、まず、ご自分の死後、誰が相続人となるかを知っておきましょう。亡くなった方に子がいない場合、親や祖父母が生存していなければ、相続人は配偶者と兄弟姉妹となります。兄弟姉妹のうち、先に亡くなった方がいる場合は、その方の子も相続人となります。今回のケースでは、既に配偶者を亡くされているので、相談者の相続人は、兄弟姉妹(亡くなっている場合はおい、めい)のみです。
また、遺言書を用意しなかった場合にはどうなるかを知っておくことも大切です。遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を決める遺産分割協議をする必要があります。今回のように兄弟姉妹が多い場合、戸籍を調べて相続人に連絡を取り、話し合いの場を設ける…など、結構な手間がかかります。また、人数が多いと話し合いも難航しがちです。この場合、めい御さんが一人で全ての遺産を手にできる可能性はかなり低いと思われます。
全財産をめい御さんに相続させるという内容のきちんとした遺言書を準備しておいた場合、遺産を受け取るめい御さんは、その遺言書を使って、相続手続きをすることができますので、手間はかなり減ります。その際、他の相続人の同意を得る必要はありません。
お子さんがいない方の相続は複雑になることも多いため、できる限り遺言書を用意しておくことが望ましいです。今回のご相談は、相続人の一人に財産を全て遺したいとの内容でしたが、相続人それぞれへの分け方を決めておいたり、相続人ではない人へ財産を残したり、様々な書き方が可能です。
遺言書を作成する際には、決められた形式を守ること、内容に矛盾がないことが重要です。これらを満たしていないと、せっかく書いた遺言書が無効になることもありますので、遺言書を作成する際は司法書士にご相談いただくことをお勧めいたします。詳しくは、お近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 豊田真由美)
埼玉新聞 令和4年2月3日から転載