■役員1人の場合の任期は
私は平成21年に株式会社を作りました。資金も全て私が用意し、役員も取締役である自分のみです。おかげさまで、これまで順調に事業を行ってきましたが、先日、同じく株式会社を経営している知人から、「役員の任期が終了したので新たな役員を選任した。君のところはどう?」と聞かれました。知人の会社は役員数も多く、自分には関係がないと思っていましたが、役員が1名の株式会社でも役員の任期はあるのでしょうか。
株式会社の内容については、会社法に定めがあります。会社法とは、会社を設立したり、運営したりする際のルールを定めた法律です。商法や有限会社法などを統合し、平成18年に適用が始まりました。
役員の任期についても、会社法に規定されていて、会社法第332条第1項によれば、「取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(以下省略)」とあります。
役員の任期に関する規定は、この条文の他にもいくつかありますが、役員が1名の場合には任期がない旨の規定は存在しません。よって、役員が1名の会社でも任期はあります。ただし、役員の再選を禁止する規定はありませんので、これまでの役員を株主総会で再び選任し、同役員による会社運営を継続していくことは可能です。
ところで、会社法第332条には第2項があり、「前項の規定は、(一部省略)定款によって、任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。」とあります。
ご相談内容からは、ご相談者様の会社が、役員の任期をいつまでと規定しているのか定かではありませんが、定款の定めにより任期を最長としてあれば、平成21年より業務を開始した役員は、まだ任期中であるため問題は生じません。しかしながら、原則通りの任期である場合、または定款によって任期を伸長していたとしても、例えば5年や7年としていた場合には、既に役員の任期は終了しているため、早急な対応が必要となります。その場合には、まず、株主総会を開催して新役員を選任します。先にも述べましたが同役員の再選も可能です。そして、その内容を登記します。登記申請は法務局に対して行いますが、登記の申請時期が遅れると、過料の制裁を受けることがありますので注意を要します。
以上の他にも、役員の任期や登記に関する内容には、多数の規定が存在しますので、専門家に相談しながら準備されることをお勧めします。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 森田和彦)
※埼玉新聞平成30年6月7日から転載