埼玉司法書士会

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■消費者被害と補助制度の活用

 実家の母は一人暮らしをしていますが、実家に帰省したところ、母が購入したと思われる使いきれない程の商品の山を目にしました。高齢者の消費者被害には補助制度が有効だと聞きましたが、どういう制度でしょうか。

 高齢者を狙った消費者被害については、一度でも契約すると次々に契約をさせられてしまうケースもみられ、周囲の方の「物品の購入が多い、見慣れない人の出入りが多い。」などの気付きが大切になってきます。
 補助とは法定後見制度の一類型で、軽度の認知症などにより判断能力が減退し支援が必要な方のために、本人や親族等が家庭裁判所に申し立てを行い、補助人という支援者を選任してもらう制度です。消費者被害を防止する目的の場合には、例えば「訪問販売による契約の締結」に関する同意権・取消権を補助人に付与する申し立てを併せて行います。一定期間であれば理由を問わず契約の解除ができるクーリング・オフ制度がありますが、本人が補助人の同意なしに行った訪問販売の契約について、補助人や本人は、クーリング・オフ申出期間後においても取り消すことができ、容易に被害を回復することができます。補助人が契約を取り消す場合は、本人の自己決定権を尊重し支援するという制度の理念がありますので、慎重に判断すべきとされています。
 また、本人が銀行の手続きについて一人で行うことに不安を感じる場合は「金融機関との取引」に関する代理権付与の申し立てを行うことにより、補助人が銀行の手続きを支援することができます。
 本人の状況に応じて、同意権・取消権と代理権の一方または両方の付与により、補助人に支援してほしいことを選択できる制度です。本人以外の申し立ての場合は、その選択について本人の同意が必要になります。
 支援が不要となれば判断能力の回復がなくても、家庭裁判所に制度利用の取り消しを検討してもらう申し立てを行うこともできます。
 認知症が進んでいる場合は、保佐・後見制度を利用することになり、いずれも取消権はありますが、支援者の権限が異なってきます。
 詳しくは、お近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会へお尋ねください。

(司法書士髙橋明子)

埼玉新聞 令和3年9月2日から転載

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