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■相続の登記はいつまでに申請すればよい?

先月母が亡くなり遺言が残されていました。相続人は長男の私と弟の二人きりですが、生前に母と弟は仲たがいをしていたせいか、自宅を含む全財産を私に相続させるという遺言でした。この遺言による自宅の相続登記はいつまでに申請すればよいのでしょうか?

相続税の申告では相続が開始してから10か月以内に申告・納税しなければいけませんが、相続登記(故人から相続人への名義変更)はいつまでという期限はありません。しかし、できるだけ速やかに申請した方がよいでしょう。それは、次のようなことも考えられるからです。弟さんは、全財産を長男にという遺言を面白く思っていないかも知れません。そこで、弟さんは遺言による相続登記がされる前であれば、長男と次男で持分各2分の1とする共有名義で相続登記はできてしまいます。その上で、弟さんが自分の持分2分の1を第三者(X)に売ってX名義に登記してしまうと、結果的にあなたとXの共有となってしまうのです。

かつては、このような場合でもX名義の登記は無効とされていたので、あなたはXから名義を取り戻すことができました。しかし、今年の7月1日から施行された改正相続法により、このようなケースであってもX名義の登記は有効であり、あなたはXに対して自分が遺言によって自宅の全部を相続したことを主張することができなくなりました。そのため、相続した自宅を完全に自分だけのものとするには、XからX名義の持分をお金を払って買い取るなどしなければなりません。遺言を無視してこのようなことをした弟さんに対しては不法行為責任を問うことはできますが、仮に裁判となれば証拠の有無等の問題もあってすんなりいくとは限りません。このようなリスクが絶対にないとは言えませんので、遺言があって、その遺言があなたにとってメリットのある内容であれば、速やかにその遺言に基づいて登記申請すべきでしょう。なお、弟さんが先に書いたようなことをしなくても、弟さんから遺留分の請求があった場合は、それに相当する金銭(このケースでは相続財産の4分の1に相当する額)を支払わなければなりません。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または 埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 上松隆行)

※埼玉新聞 令和元年12月5日から転載

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