■相続手続きを先延ばしにしない
昨年、夫を亡くしました。私たち夫婦には2人の息子がいます。
夫の遺産は、自宅の土地と建物のみで、私たち夫婦と長男一家がそこで暮らしてきました。次男は別のところで所帯を持っており、私と長男一家が自宅に住み続けることを了承してくれています。
相続手続きは早くした方がよいと聞いたことがありますが、今まで相続手続きをしていなくても特に不都合は感じていません。今後も手続きをしなかった場合、何か問題が生じるのでしょうか?
相続手続きを先延ばしにする一番のリスクは、相続人の誰かが亡くなってさらに相続が発生したときに、相続関係が複雑化してしまうことです。血のつながりも交流もないような他人の協力を得ないと相続手続きができなくなるケースもあります。そうなると、もめて裁判等になるリスクも高まり、法律家に依頼したからといって思うように解決するとも限りません。
現在、あなたの自宅は、法律上はあなたと長男と次男の3人で共有している状態です。この先、相続登記をしないまま息子さんのどちらかが亡くなってしまうと、その息子さんの持ち分の全部または一部は、息子さんの妻が相続します。
仮にあなたや長男よりも先に次男が亡くなり、次男に妻がいた場合、次男の持ち分の全部または一部は次男の妻が相続します。そして、次男の妻が、あなたと長男に対して持ち分を主張してきた場合、実際に自宅の一部を切り分けて次男の妻に譲ることは現実的ではないので、代わりに相応の金銭を次男の妻に支払うか、相応の金銭がないのであれば、最悪自宅を売って、売却代金の一部を次男の妻に分けるなどの対応を強いられます。
次男は相続財産はいらないと言ってくれているとしても、次男の妻も同じように言ってくれるとは限りません。次男が元気な今のうちに、あなたと長男と次男の3人で遺産分割協議をし、自宅の名義をあなたか長男(またはあなたと長男の共有)に変更する相続登記をしておきましょう。
そして、あなたの名義にするのであれば、あなたの亡き後に息子さんたちがもめることがなるべくないよう、遺言を書いておくことも検討してはいかがでしょうか。遺言には、もめ事を減らすだけでなく、あなたの相続人たちが行う相続手続きの手間を減らす効果もあります。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 西野秀明)
※埼玉新聞平成30年2月1日から転載