埼玉司法書士会

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■終活の実現に向けて

私は、丑(うし)年生まれで今年84歳になります。10年前に夫を病気で失い、子供はおりませんが、兄弟とおい、めいがおります。私の人生もそろそろ最終コーナー、残される財産の行方も心配です。来るべき後の準備として遺言書を作成するに当たりアドバイスを頂けたらと思います。よろしくお願いします。

昨今、マスメディアなどで相続に関する話題がしばしば取り上げられています。書店などでも「エンディングノート」と題した書籍が売られ、高齢者の方々の相続についての意識も高まっているようです。「エンディングノート」自体には法的効力はないのですが、遺言者の思いを相続人の方々に伝えるのに非常に良いと思います。そして、相談者様が遺言書を残すことは遺産を巡る争いをあらかじめ回避することも含めて賢明なお考えです。遺言書には、主に公正証書遺言、自筆証書遺言の2種類があります。公正証書遺言は公証役場で作成してもらいます。法律の専門家が作成する信頼の置ける遺言書となりますが、財産額等に応じて費用がかかります。自筆証書遺言は遺言書全文、日付および氏名を自筆し、押印して作成します。通帳のコピーやパソコンで作成した財産目録、不動産登記事項証明書を別紙として添付できます。公正証書遺言と比べて費用はかかりませんが、公正証書遺言と違って変造防止のため、相続発生後に家庭裁判所で検認手続が必要です。もっとも、自筆証書遺言を作成した上で法務局での自筆証書遺言書保管制度を利用すれば検認手続の必要がないなど、それぞれの方法にメリットデメリットがあります。次に遺言書の内容として、残された遺産が相談者さまの熟慮を重ねたうえでのご意思に従い相続人等の方々が受遺されることが理想ではないかと思います。例を挙げれば、相談者さまの遺言の選択肢として医療福祉施設等への遺贈等も視野に入れるのもありかと思いますし、その際、遺言執行者の選任も必要になります。また、ご兄弟に相続してもらう場合に、遺族となる配偶者や子らと違い法的保障である遺留分がないということも考慮し、特にお世話になったご兄弟やおいごさんやめいごさんに受遺していただくことも可能です。詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 滝本徹郎)

埼玉新聞 令和3年2月4日から転載

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