■経営者のための会社法務(Vol.4)~取締役会について~
株式会社では、取締役3名、監査役1名を置いた取締役会設置会社が多く存在します。これらの会社の中には、親族が名ばかり役員として登記されている場合も少なくありません。
株式会社は、平成18年の会社法施行以前は、取締役を3名以上、監査役を1名以上選任して、取締役会を必ず設置しなければなりませんでしたが、改正法施行以降は、株式会社でも、必ずしも取締役会を設置しなくてもよいケースがあります。
取締役会は、取締役の全員で構成される合議体です。会社が発行する全ての株式について、譲渡による取得をする際に会社の承認を要するとの定めを設けている会社(定めがあるかは登記の内容を見ると分かります)では、取締役会を設置しないことができます。取締役会を設置していない会社を「非取締役会設置会社」といい、取締役は1名だけでもよく、監査役を置かないことも可能となります。
取締役会を設置している会社を「取締役会設置会社」といいますが、取締役会設置会社では、取締役は3名以上必要であり、株主総会における決議事項が大きく制限されています。例えば、株主は株主総会で取締役の選任・解任をはじめとする会社の重要な事項について決議をすることができますが、会社の運営・管理に関する事項については決議をすることができません。
代表取締役の選定方法も、取締役会設置会社か非取締役会設置会社かで異なります。
取締役会設置会社では、取締役会の決議によって取締役の中から選定されます。
非取締役会設置会社の場合、取締役1名のみの会社では、自動的にその取締役が会社を代表する権限を持ちます。取締役が2名以上いる場合には、原則として取締役全員がそれぞれ会社を代表する権限を持ちますが、それぞれが代表権を行使するのは会社側としては管理が大変になりますので、定款で会社を代表する取締役を定めておくことや定款の定めに基づく取締役の互選で代表取締役を定めることができます。また、定款に規定がなくても、株主総会で決議することにより代表取締役を決めることもできます。
社長の妻や親族などが形だけ取締役や監査役となっていて、お小遣い程度の報酬を支払ってはいるものの、実際には会社のことには何も関わっておらず、取締役会も実質開かれていない、といった会社は少なくないと思われます。このような状態は望ましいものではありません。取締役会が形骸化している場合には、会社の形態を変更して非取締役会設置会社にすることも検討の余地がありますし、非取締役会設置会社となれば監査役を廃止することもできますので、「今後事業承継を予定しているので組織形態を変えておきたい」、「業績が悪化しているので組織をスリム化したい」といったニーズに対応することも可能となります。
今回は、取締役会に注目しましたが、会社の規模や現状に応じて、どのように会社の意思決定をするか、会社の運営や監督方法はどうするか、といったことを改めて考えることは大切なことと思われます。
御自身の会社にふさわしい機関設計を検討される際には、ぜひ司法書士に御相談下さい。
(司法書士 千代間道子)
※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和4年3月1日から転載