■経営者のための会社法務(Vol.8)~社長の終活を考える~
最近、ちまたでは終活がブームでして、自身で保有している財産の洗い出しをした上で、今後のライフプランを立てたり、エンディングノートや遺言を作成する方も増えてきています。
それでは、経営者(社長)の終活を考える場合はどのようになるのでしょうか。もちろん、自身の財産の洗い出しは重要なことですが、経営者特有な事項として、いつまで事業に関わるのか、自身がリタイアした後の事業をどうしていくのかが重要なことになってきます。そして、それを実現するために、どのように進めていくのか、株式や事業用の財産等を円滑に引き継げるよういかに対策をしていくのかが課題となってきます。
その手始めとして、株主や資産等、会社の状況を把握することが重要です。株主については、2021年11月号で取り上げたところですが、所在不明株主がいるような会社の場合には、その株主が株式を取得した経緯等を調べていく必要があるものと思われ、過去の記録等を参照していくことになります。必要に応じて、所在不明株主の整理を行っていくことになりますが、5年間の通知等比較的期間がかかる手続きなので予め準備をしておく必要があります。
また、経営者のリタイア後の事業、いわゆる事業承継についても検討を進めていく必要があります。その方法としては、親族内承継や第三者承継、M&A、そして廃業等と様々な手段が考えられます。方向性が定まった後には、計画を立てて段階を踏んで進めていくことが重要となってきます。最終的に事業承継に至るまでには期間がかかる場合もあり、その間のリスクについても対応しておく必要があります。
その中でも、遺言等により、現経営者が亡くなられた後に株式の承継を予定する場合には、亡くなる前に認知症により株主としての議決権を行使できなくなるケースも想定しておかなければなりません。このことは、2022年5月号で取り上げたところですが、任意後見制度や民事信託を活用して予めの対応策を取っておくことも重要です。
自身の終活について、元気だから、まだ早い、というお話をよく聞きます。「まだ早い」が「もう遅い」に変わるのは、体の不調等ほんの一瞬に過ぎない場合もあります。「まだ早い」ではなく、様々なリスクを避けるために、予め対策をしておくことが必要です。まずは、顧問税理士や商工会議所の経営相談員、司法書士等に相談してみることからはじめてみませんか。
埼玉司法書士会では、越谷市の司法書士総合相談センターにて様々な相談(面談・予約制)に対応しております。
(司法書士 吉田 健)
※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和4年11月1日から転載