埼玉司法書士会

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■経営者のための会社法務(Vol.9)~ 議事録作成のススメ~

 会社を運営していく上では、要所要所で会議を開いてその会社の組織、運営、管理に関する様々な決定をする必要があります。例えば、株主総会や取締役会などです。

 株主総会は、年に1回必ず開催しなければならない定時株主総会とその必要が生じた際に随時開催する臨時株主総会があります。株主総会で決定する事項の代表例としては決算承認や役員改選などです。株主総会に出席して議決権を行使する人は株主になります。

 取締役会は、少なくとも3か月に1回以上は開催しなければなりません。取締役会に出席して議決権を行使する人は取締役になります。なお、取締役会は全ての会社に存在する会議体ではなく、取締役会のない会社もあります。自社がどちらかわからない場合は、定款または会社の謄本(履歴事項全部証明書)でご確認ください(なお、取締役が1名または2名しかいない株式会社は必ず取締役会のない会社です)。取締役会では、会社の業務執行に関する事項を決定し、各取締役は各々の職務執行の状況を報告しなければなりません。

 株主総会と取締役会では決議できる事項が異なりますし、会議体の構成員も異なります。株主は会社に出資している人で経営には直接関わりません。取締役は株主から会社の経営を託された人です。同じ人が株主と取締役を兼ねていることもあり、むしろ中小企業では株主と取締役が同一人であることがほとんどですが、法律上の立場は全く異なることにご留意ください。

 コロナ禍以降では、多数の人が同じ場所に集まることが憚られるようになったこともあり、書面(またはメール)による決議やインターネットを使って画面越しで会議に参加する方法が盛んに行われるようになりました。

 ここで、法律専門職である司法書士の視点から、是非推奨させていただきたいのが議事録の作成です。元々、株主総会や取締役会の議事録の作成、保管は会社法で義務付けられていますが、中小企業では必ずしも作成されていないという実情があります。議事録をきちっと作って保管しておくことは、紛争の予防という観点からとても大事なことです。いつ、何を、どのようにして決めたのか等を明確にして、それを記録に残しておくことは紛争の予防に大いに役立ちます。また、不幸にも紛争が発生してしまった場合には議事録等の書類は会社の行為の正当性を証明する重要な証拠になります。

 さらに付け加えますと、議事録さえ作っておけばそれで済む、ということではありません。当たり前のことですが、株主総会や取締役会を会社法に則った手順を踏んで開催していることが前提になります。株主総会や取締役会を開催した実態を伴わず、単に議事録という紙にハンコが押してあるだけでは法律的に無効と言わざるを得ません。そのような形だけの議事録では、その内容に不満のある株主や取締役から異議が出たときには、会社側は窮地に陥ってしまい、紛争予防に役立つどころかさらなる紛争の火種にもなりかねません。

 司法書士は、株主総会や取締役会の開催方法や議事録の作成方法についてのご相談も承りますので、お近くの司法書士または司法書士会をご活用ください。

(司法書士 上松 隆行)

※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和5年1月1日から転載

 

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