埼玉司法書士会

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■自分の分だけ相続手続きできる?

先日、父が亡くなりました。相続人は母と兄と私の三人です。手持ち資金があまりないので唯一の遺産である普通預金を早く引き出したいのですが、銀行からは相続人全員で話し合いをするように言われました。しかし母は認知症で兄は行方不明のため話し合うことが出来ません。

インターネットで調べると自分の法定相続分であれば遺産分割協議をせずに預金を引き出せるような事が書いてあったのですが、なんとかならないでしょうか。ちなみに遺言書はありません。

これまでであれば普通預金は相続開始によって当然に、各共同相続人にその相続分に応じて承継されるものとされていました。

つまり、相談者さまは単独でご自身の相続分(本ケースでは4分の1)について普通預金の払い出し請求をすることができるというのが裁判所の判断だったのです。

しかし、平成28年12月19日、最高裁でこの取り扱いとは異なる判例変更が行われました。「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる」というものです。これにより今後は普通預金であっても、遺言等がない場合、相続人全員で協議の上、誰がいくら相続するのか決めなければ引き出すことができない取り扱いになると思われます。

相談者さまの場合、お母さま、お兄さまと協議をすることになりますが、お二人とも話し合いができる状況にないので、法定代理人を選任する必要があります。具体的には、お母さまには成年後見人、お兄さまには不在者財産管理人が法定代理人になります。

 これらはともに家庭裁判所が選任するものですので、お母さまの住所地を管轄する家庭裁判所に後見開始の申立てを、お兄さまの従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てを行い、法定代理人が選任されるのを待ってから遺産分割協議をすることになりますね。

 詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 松永賢一)

※埼玉新聞平成29年2月2日から転載

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