■裁判所まで行かずに裁判ができる?
裁判IT化によって、裁判所まで行くことなくウェブ会議を利用して裁判をすることができるようになったと聞きましたが、本当ですか。
これまで、日本の裁判は、「書面」、「対面」が基本とされ、欧米や中国、シンガポール、韓国など諸外国に比べIT化が大きく遅れていました。そこで、内閣官房内に設置された「裁判手続等のIT化検討会」が「民事訴訟におけるIT化を推進する」という方針を決定し、そこから急ピッチで法改正が進められて、令和4年5月25日に改正民事訴訟法などが公布されました。これらの改正法は、部分的に少しずつ施行されてきていて、裁判のIT化が順次進んでいます。
本年3月1日からは、民事訴訟の口頭弁論(公開の法廷で当事者双方が主張を行う通常の裁判期日)にウェブ会議で参加することを可能とする改正が施行されました。今までは実際に裁判所に出頭する必要がありましたが、本年3月1日からは、裁判所に行くことなく、ウェブ会議を利用して民事訴訟の口頭弁論に参加することができるようになったのです。ウェブ参加の要件としては、裁判所が当事者の意見を聴いて相当と認めたときとされており、要件は緩やかであるため、ウェブ参加を希望する方については広くウェブ参加を認めるような運用が期待されます。
なお、証人尋問や当事者尋問をウェブ会議によって実施するための要件を緩和する改正もされていますが、その改正は、令和8年5月25日までの政令で定める日に施行されます。
また、離婚訴訟などの人事訴訟の口頭弁論にウェブ会議を利用して参加することを可能とする改正もされていますが、この改正については、民事訴訟の口頭弁論にウェブ会議を利用することを可能とする改正の施行日(令和6年3月1日)から1年6か月以内の政令で定める日から運用することとされており、人事訴訟の口頭弁論にウェブ会議に参加することができるようになる時期は、別途、政令によって決められることになります。
その他、今までは裁判所へ持参するか郵送するかしなければならなかった訴状などの書面の提出をインターネット上で行うことができるようにする改正も成立し、令和7年度中に施行される予定です。
裁判IT化により、裁判手続きがより利用しやすくなると思われます。詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎ 048・863・7861)へお尋ねください。
(司法書士 佐藤洋一)
埼玉新聞 令和6年9月5日から転載