■裁判所提出書類作成に関する司法書士費用の分割払い
両親は私が高校生の時に離婚しました。その後10年以上父とは音信不通でしたが、昨年亡くなりました。警察から本人確認を求められて死亡の事実を知りました。相続については、特に財産のことを調べたりはせず、何ら手続きはしませんでした。最近になって、父の医療費を支払うよう請求書が届きました。家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをすれば相続しなくても良いとは思いますが、裁判所に提出する書類の作成に自信がありません。裁判に提出する書類の作成を司法書士に依頼しようと思っています。ただ、書類作成を依頼する費用をすぐに支払うことができません。このような場合、費用を分割で支払うことはできるのでしょうか。
お父様が亡くなられた場合、お子さまが第1順位の相続人となり、原則として亡くなられた方の財産(借金も含みます)を引き継ぐことになります。もっとも、亡くなられたことを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の申述(申述書を提出)をすれば、相続人とならないことができます。亡くなってから3カ月といっても、亡くなった事実を知っただけでなく、財産(借金)の存在を知ってから3カ月以内という取り扱いとなっていますので、ご相談者様のケースでも相続放棄の申述をすることは可能であると考えられます。
司法書士業務の中には裁判所に提出する書類の作成業務があり、家庭裁判所に対する相続放棄の申述書などの書類を作成することも業務としています。司法書士に依頼した場合には、書類作成の報酬などの費用がかかりますが、一括での支払いが難しい場合には、司法書士の費用について日本司法支援センター(通称「法テラス」)の立て替え制度を利用できる場合があります。
法テラスは国民が法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるために設立された法務省所管の公的な法人です。法テラスは、弁護士・司法書士の費用を立て替える民事法律扶助業務を行っています。この業務は、経済的に余裕のない方に対して弁護士・司法書士の費用を援助することによって、その方の裁判を受ける権利を実質的に保障する制度と位置づけられています。
司法書士が行う裁判所に提出する書類の作成業務の費用についても、一定の資力要件、資産要件を満たせば法テラスを利用できます。書類作成の費用は法テラスの基準によって定められており、利用者は法テラスに対して毎月5千円からの分割払いが可能です。
詳しくはお近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会事務局(048-863-7861)にお尋ねください。
司法書士 平澤純
埼玉新聞 令和2年10月8日から転載