■遺言により妻に安心して財産が残せます
私は妻と二人暮らしですが、70代になり自分の相続のことが心配になってきました。私たちには子供がいません。自宅は私が所有しているので、預貯金などとともに妻に相続させたいと思っています。私には兄と弟がいますが、それぞれ家族もあり、私の相続のことで面倒をかけたくありません。生前に何かやっておけることはないでしょうか?
あなたに相続が発生した場合、ご両親とも既に他界されていれば、奥さまと、あなたのご兄弟が相続人となります。また、ご兄弟があなたより先に亡くなっていた場合には、その子つまり甥(おい)姪(めい)が相続人となります。妻としては、夫側の親族に、なかなか相続の話を切り出せないこともあるでしょう。あなたの場合、奥さまに不動産と預貯金等を相続させる内容の遺言を作成しておくことをお奨めします。相続人となる兄弟姉妹または甥姪に遺留分はないので、遺言により、安心して財産を奥さまに残すことができます。
遺言には大きく分けて公正証書遺言と自筆証書遺言があり、それぞれ長所短所があると言えましょう。公正証書で遺言を作成する場合、公証役場に依頼するため手間と費用はかかりますが、相続が発生したときに、今回のご相談では残された妻が、公正証書遺言のみですぐに相続の手続きをすることができます。一方、自筆証書遺言の場合、遺言者本人が自筆で書くので費用はかかりませんが、書き方によっては遺言が無効となる可能性がありますし、相続発生後に裁判所の検認申立てをしなければなりません。
なお、2018年(平成30年)7月に相続法の改正が成立し、遺言についても、2019年1月13日の施行日より自筆証書遺言の方式が緩和され、財産目録についてパソコンで作成した不動産目録や通帳のコピーなどを添付することができるようになりました。また、法務局における遺言書の保管等に関する法律が2020年7月10日に施行となり、自筆証書遺言の保管を、法務大臣の指定する法務局に申請することができるようになります。こうした制度により、遺言をより身近に考えることができるようになるでしょう。
詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ね下さい。
(司法書士 狐塚友子)
※埼玉新聞 平成31年2月7日から転載