■遺言書を書こうか迷っています。
子どもたちは仲が良いので遺言書を書かずとも、きっと円満に話し合いで決めてくれることでしょう。ただ、遺言書を書いておきたいという気持ちもあり、悩んでいます。どうしたらよいでしょうか。
遺言書はご本人の意思で、書きたいときに書きましょう。ご自身の財産を、生前にご自身のために使うことはもちろん構いませんし、亡き後に財産をどうしたいかを決めるのはご自身なのです。
ただ、認知症等により判断能力が低下すると書くことができなくなり、書いたとしても亡くなった後に裁判で無効を争われる可能性もあります。遺言書は何度でも書き直しができます。書き直した後の最新のものが有効とされるので、元気なうちに気持ちが変わったら書き直す、くらいの気持ちで書き始めましょう。遺言書を書いておくことで、心のもやもやが解消され、安心した生活が送れるなら、ご自身の人生のためにもプラスに働くと思います。
【遺言書作成の方法について】以下①、②が一般的に多く用いられています。
① 公正証書遺言
公証役場で作成する方法です。
費用はかかりますが、公証人が法律的に不備の無いものを作成してくれるので、ご自身が亡くなった後に争いになりにくいというメリットがあります。公証役場まで行けない場合は、公証人がご自宅や施設に来て くれますので、公証役場へ出向かずに作成することもできます。なお、公証人との遺言内容の打ち合わせは、司法書士がご本人からお話を聞き、間に入って行うこともできます。
② 自筆証書遺言
ご自身の直筆を中心に作成する方法です。
自筆証書遺言を法務局で保管する制度があり、この制度を利用すると、亡くなった後に遺言書が保管されていることを相続人に通知することも選べます。保管の申請時には、ご自身で法務局に出向く必要がありますが、遺言者が亡くなった後の家庭裁判所での検認手続が不要となり、また、偽造変造の可能性が低くなるというメリットもあります。
※ご自身で自筆証書遺言を作成する場合に、注意していただきたいこと
相続させたい財産を、ご自身が所有する「全ての財産」「全ての不動産」と書く場合は問題ないのですが、例えばご自宅をだれかにあげたい場合、住居表示(〇番〇号)がある地域にお住まいの方は、ご自宅の住所(住居表示)をそのまま書かずに、不動産の地番を書くようにしましょう。登記手続きで遺言書が使えなくなる可能性があります。不動産の地番が分からない方は納税通知書を参考に、所在、地番、地目、地積で特定するようにしましょう。
特に自筆証書遺言の場合は、司法書士による遺言相続相談会等をぜひご利用ください。
詳しくは、お近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会(☎048-863-7861)へお尋ねください。
(司法書士 間瀬 彩也香)
埼玉新聞 令和6年10月3日から転載