埼玉司法書士会

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■障害をもつ子どものために信託を活用する

 私には生まれつき知的障害を抱える子ども(次男40歳)がいます。私が同居して面倒を見ていますが、私が亡くなった後のことが心配です。障害を抱える子どものために信託を活用できると伺いましたが、具体的にはどのように活用することができるのでしょうか。ちなみに、子どもは他に長男(46歳)と長女(43歳)がおります。

 例えば、長男に対して、次男のためにしか使えないように使いみちを限定した金銭を渡すという方法が考えられます。遺言書に残し、あなたが亡くなった段階で渡るようにしてもいいですし、今から渡しておくことも可能です。

 しかし、あなたが「次男のためにしか使えない」と使いみちを限定したとしても、周りの人間にはそれが分かりません。それを分かるようにするのが信託という仕組みです。長男に渡される金銭は、「次男のためにしか使えない」という特徴をもち、言ってみればお金に色をつけるわけです。

 では、どのような手続きを踏めばいいのでしょうか。まず、あなたと長男の間で、長男に渡す金銭の管理方法などに関する決まりごと(信託契約書)を決めます。その後、銀行で専用の口座を設け、そこに金銭を預け、以後長男が管理します。その口座の中の金銭は、次男のためにしか使えない金銭となり、周りの人間にもそれが分かるようになります。そうすると、長男が亡くなった場合でも、この金銭は長男の遺産とはなりませんし、長男が破産した場合でも、差し押えの対象にはなりません。

 また、長男が信頼に足る人物だとしても、金銭の管理が数十年に及ぶことを考えると、監督する立場の人間が必要です。長女にお願いしてもいいですし、適任者がいなければ司法書士などの専門職に依頼するのも一つの方法です。

 なお、信託の対象となる財産は金銭に限られません。自宅や賃貸不動産などを、次男のために活用してもらうべく長男に渡す(=信託する)という選択もあり得るでしょう。このような主に家族間の信託を「民事信託(家族型民事信託)」と呼んでいます。民事信託に関するご相談について、詳しくは、お近くの司法書士事務所または埼玉司法書士会(☏048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 押井崇)

 

埼玉新聞 令和3年7月8日から転載

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