埼玉司法書士会

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■飲み屋の付けが1年限りではなくなる?

今度、法律が変わって、今までは、飲み屋の付けが1年たてば払わなくてもよかったものが、そうではなくなるという話を聞きました。どういうことでしょうか?

そろそろ、そういう話が皆さまの話題になることでしょうか。というのは、われわれの基本的な生活に関する民法という法律が大きく改正されて、特に、取引に関するルールが隅々まで変わりました。「飲み屋の付けの1年」の問題は、その中の「時効」のルールの変更に関するものです。おっしゃるとおり、現在は、飲み屋の付けは1年で消滅時効にかかります。分かりやすい表現では、1年たてば支払わなくてよくなる、権利が消滅する、というのは間違いではありません。ところが、今度このルールが変わって、2020年4月1日から、実際の社会生活上では、これが原則5年に延びることになります。

一昨年、民法が大改正されて、特に取引に関する(債権分野)ルールが大きく変更されました。そして、施行されるのは、来年になるということなのです。

「飲み屋の付け」などの、額も小さく、また他の零細な職業上の種類の取引に関する時効のルールには、これまで5年以内のかなり短い消滅時効に関する定めがありました。しかし、今度の改正は、この細かい区別をやめて、原則は5年にするということなのです。

法律の形は、「債権者が請求できるときから」10年、「債権者が請求できることを知った時から」5年、そのどちらか短い方となっています。さて、お店を経営している債権者は、通常は、自分がお客に請求できることを知る時と、請求できる時とは同時になりますから、お客とすれば、お店で飲食して請求される状態になった時、飲み食いが終わった時でしょうね。その時から5年というのが「原則」になるというわけです。

細かい区別をなくしたことによって、原則5年まで消滅時効期間が延びるというのは、分かりやすい改正であるとは言えます。しかし、5年と言えば、かなり長いと感じられもするでしょう。特に、1年の超短期の消滅時効の債権であった、「運送費、旅館の宿泊費、料理店・飲食店の飲食料等」などは、できるだけ領収証をもらって、保管しておくことが、望ましいでしょう。カード・スマホ払いなどのキャッシュレスでの支払いができるお店では何の問題もありませんが、特に現金取引の小さなお店では、領収証を出してくれないところもありますから、最終的には、そのお店との信頼関係次第ということになりましょうが、なかなか難しい面もありますね。

詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 伊藤亥一郎)

※埼玉新聞 令和元年6月6日から転載

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