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■高額の原状回復費用に納得できない!

先日、8年間住んでいた賃貸アパートを退去したところ、敷金の金額を上回る高額の原状回復費用を請求されました。地震でヒビが入った窓ガラスの交換費用まで請求され、納得できません。大家に反論したいので、原状回復の費用負担のルールについて教えてください。

アパートやマンションなど賃貸住宅の借り主は、賃貸借契約の終了時に、借りていた物件について原状回復義務を負います。原状回復とはいっても、借りた時の状態に完全に戻すという意味ではありません。この場合の原状回復義務は、借り主に責任がある損傷、例えば子どもの落書きによる汚れやペットの引っかき傷などを元通りにする(その費用を負担する)義務のことです。

つまり、冷蔵庫の後ろの壁の黒ずみのような、通常の暮らしをしていても生じる損傷(通常損耗)や、日光による床の変色などの、年月の経過による自然な劣化(経年劣化)については、原則として原状回復義務の対象ではなく、その復旧費用を借り主が負担する必要はありません。地震などの自然災害による損傷(今回のご相談の窓ガラスのヒビ)も同様です。

もっとも、原状回復の費用負担については、貸し主と借り主の合意によって、上記の基本的ルールと異なる内容の特約を定めることができるため、貸し主が負担すべき費用が借り主の負担となる場合もあります(一例としてハウスクリーニング費用を借り主負担とする特約)。このような特約は、賃貸借契約書や費用負担区分表など契約時の書面に記載されますので、内容をしっかり確認することが重要です。

なお、特約が存在する場合でも、その内容や契約時の事情によっては有効性が否定される場合があり、原状回復トラブルにおいてはこの点が度々争点となります。特約を巡る争いについては専門家に相談されることをお勧めします。

詳しくは、お近くの司法書士事務所、または埼玉司法書士会(☎048・863・7861)へお尋ねください。

(司法書士 山田知輝)

埼玉新聞 令和3年4月8日から転載

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