
■2020年4月1日に施行される民法(債権関係)改正法についてvol.1
1 はじめに
明年(2020年)4月1日に施行される民法(債権関係)改正法(以下「債権法」という。)について、埼玉司法書士会が担当して今月から6回シリーズでその概要をご案内して参ります。
今回は、その第1弾として皆様の事業経営に関わることが多い、かつ、取引の中心となる売買契約への影響についてご案内いたします。この売買契約に関する改正は、取り分け大幅な改正となっています。その中でも重要な柱である「契約内容不適合」、「危険負担」及び「契約の解除」についてご案内いたします。
2 契約内容不適合
現行民法(以下「現行法」という。)は売買契約を「特定物」と「不特定物」とに区別して売主の担保責任を規律していましたが(法定責任説)、債権法はその別なく引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合(契約内容不適合)には債務は未履行(債務不履行)であるとする規律に改正されました(契約責任説)。
現行法の「隠れた瑕疵」の表現を、債権法は判例が解釈してきた「契約内容不適合」に改め、その担保責任の性質を債務不履行責任に一本化しました。例えば、売買契約により買主に引き渡された商品や種類等が契約内容に適合しない場合、現行法では「特定物」と「不特定物」に分けて対応を規律しかつ買主の善意無過失をその要件としていましたが、債権法はそうした主観的な要件を採用せず、商品等の不足等の不適合の場合に不適合を解消するための規律として①追完請求(第562条)、②代金減額請求(第563条)、③損害賠償請求(第564条)及び④契約の解除(第564条)ができるとしました。また、移転した権利が契約内容に適合しない場合にもこれらの規律を準用することにしています(第565条)。
3 危険負担
危険負担というのは、売買契約後の担保責任を売主と買主のどちらが負担をするのかとの規律です。現行法は売買契約締結時をもってその危険負担が売主から買主に移転すると解釈してきましたが、債権法は明文をもって引渡し後に売主から買主に移転すると規律しました(第567条)。従って、家屋の売買契約が成立し引渡前に当該家屋が売主及び買主双方の帰責事由によらず焼失した場合に、現行法は焼失によって引渡しが履行不能になっても既に危険負担は買主に移っているとして代金の支払いを拒絶できないとしていましたが、債権法は家屋の引渡しにより始めて危険負担が買主に移るとしたので、引渡し前は代金の支払いを拒絶できることになります(第536条)。
4 契約の解除
現行法の契約解除ための売主の帰責事由の要件が見直されて、債権法はそれがなくても、催告をすれば解除ができるようになりました。詳しくは、シリーズ(3)解除(会報11月号)でご案内いたします。
(債権法改正対応委員会副委員長 森田和志)
※越谷商工会議所会報「鼓動」 令和元年7月1日から転載